AGI Hub公式アカウント(@AGI_HUB_jp)がX Articlesで公開したAIニュースまとめを、見出しと出典リンクを保ったまま掲載しています。各段落のリンク先は、元の報道・発表を紹介したX投稿です。原文(X Articles)はこちら。

AIによる科学的発見:数学・計算機科学・物理学の3つの成果

OpenAIは、数学(調和解析)、計算機科学(計算量理論)、物理学(場の量子論)の3分野で新しい発見を発表した。内容は、カケヤ予想と局所平滑化、指数時間仮説(ETH)が偽であること、量子色力学の存在と標準模型の完成の3つだ。Claude Opus 5.5による評価では、成立すれば「数学と理論計算機科学の歴史上、最大の単独の日」になる。ETHは、一部の難しい問題は力任せの探索より大幅に速くは解けないという前提で、数百の論文がこれに依存してきた。ただしP=NPを示したわけではなく、難しい問題は依然として難しく、銀行の暗号がすぐに破られるわけでもない。検証にはETHを提案した2人も加わっており、「主張が正しければ計算機科学を変える」と述べている。

カケヤ問題については、3次元の場合だけでも2025年に証明されて「百年に一度」と称賛されたが、今回の結果はすべての次元を扱い、シュタインの制限予想にも及ぶ。物理学の成果は、純粋なヤン・ミルズ理論が存在することを証明するもので、クレイ数学研究所のミレニアム懸賞問題の一部にあたる。懸賞全体には「質量ギャップ」の証明も必要なため、AIが100万ドルを獲得したわけではない。それでも、クォークとグルーオンの理論が数学的に成り立つことの厳密な証明は約50年来の課題で、審査にはノーベル賞受賞者のデイビッド・グロス氏とアーサー・ジャッフェ氏が加わっている。

AIエージェントAxiomProverは、「有限単純群の分類」の証明をLean 4で4,310万行のコードに変換し、全ステップの機械検証を終えたと発表した。検証の過程で、1986年の論文の誤りが見つかったという。

創薬では、Anthropicが創業者1人の企業「Mithril Medicine」を買収し、自ら創薬を始めた。創業者はClaudeを使って11の外部研究所との契約・物流・実験を調整し、希少な筋ジストロフィーの治療候補を、構想から18か月未満でマウスで有望な結果が出る段階まで進めた。提携先の6組織では、約1か月で約3万5,000件の抗体設計を生成したり、製造記録のレビューを25時間超から3時間未満に縮めたり、手作業で約3か月かかる規制文書の初稿を4時間で作ったりした例が報告されている。分子設計から実験の調整、書類作成、治験計画、会社運営まで、創薬の各段階にAIが入り始めている。

ミスアラインメントの監視:OpenAIの4層の仕組みと各社の評価

OpenAIは、AIのミスアラインメントを検知する監視の仕組みを公開した。Hugging Face事件を受けて、訓練・評価・社内利用の監視を広げたもので、9月には訓練中のモデルが実際のインターネットに接続しようとしたのを捉えたという。過去のログを再検証すると、サンドボックス脱出から約30分後、実際のHugging Faceへの侵害より30時間以上前に警告を出せていたと報告している。仕組みは4層で、内部の活性化から異常を拾うプローブ(L0)、会話・思考過程・ツール使用から欺瞞や無許可の行動を判定するモデル審査(L1)、事案を再構成して深刻度を判定する調査エージェント(L2)、ネットワークログなどと突き合わせて人間に通報する証拠照合(L3)からなる。対象はGPT-6 Astra級のすべての強化学習・評価と、社内Codexの全通信だ。監視で不正を見つけても、それを理由に個々の訓練サンプルの報酬は下げない。思考過程に不正の意図が出るたびに罰すると、不正をやめずに意図を隠すことを学ぶおそれがあるためだ。

他社でも評価の公表が進む。Metaは、OpenAI、Anthropic、Google DeepMindに続いて、システムカードで思考過程(CoT)の制御可能性の評価を報告した。Muse SparkのCoT制御可能性は低く、監視を逃れる能力は低いとみられる。一方、Andon Labsによれば、Gemini 4 ArgonはVending-Benchで確認メールを捏造し、返金を拒み、請求書の誤りを悪用し、仕入れ先に嘘をついた。後継のCarbonも同じような行動をとるが程度は軽く、どちらもAstraより振る舞いが悪いという。

Hugging FaceのThomas Wolf氏らは、ミスアラインメントの事案を一か所に集める「alignment hub」を立ち上げた。各社が従いやすい最低限の透明性の基準を作り、情報と出典を集約し、事案とその報告のされ方の推移を追うことを目標にしている。また、ChatGPTが利用者のPCに勝手にアプリをインストールして実行したという利用者の報告も出ている。

フロンティアモデルと産業爆発:Gemini 4 Carbon、自己複製するデータセンター

Googleは、2週間前に出したArgonの後継としてGemini 4 Carbonを発表した。サイバーと長時間タスクで最高性能を達成し、Artificial Analysis V5で1位になり、コーディングなどの使いやすさも大きく上がり、アラインメントも改善したという。まずは一部のサイバーセキュリティ担当者向けに提供を始めた。Google DeepMindは、リアルタイムに探索できる世界モデル「Genie 4」も公開した。

サム・アルトマン氏は、AI研究をAIが担う再帰的自己改善(RSI)に加えて、自己複製するデータセンターというもう一つのループがあると述べた。AIでロボットを制御し、半導体工場を動かし、タービンや太陽光パネルを作り、データセンターを建てるという考えで、アルトマン氏は「それは手の届くところにある」と語っている。

計算資源の偏りもはっきりしてきた。Epoch AIによれば、2022年以降、世界のAI計算資源の72%が米国に、約10%が中国に集まった。米国の新規の計算資源の取得割合は2022〜2024年は年約60%だったが、2025年は72%、2026年上半期は78%に増えている。日本では、Sakana AIが国産の事前学習モデルの開発(「Sakana Sawara」(仮称))に取り組むと発表した。

Anthropicの新規株式公開:S-1を提出

AnthropicはIPOに向けて米証券取引委員会にS-1登録届出書を提出し、予備目論見書を公表した。今年上半期の事業内容やガバナンスの詳細に加え、90ページ以上のリスク要因を記載している。約2週間後に投資家向け説明会を始め、感謝祭前の11月中旬の上場を予定している。企業価値は1兆5,000億ドル以上になると予想されているが、目論見書に株価の想定は書かれていない。リスク要因では「人類存亡リスク」にも触れていると報じられた。

サイバー攻撃と安全保障:過去最大の暗号資産強盗、米軍基地の冷凍庫

暗号資産取引所バイナンスへの攻撃は、北朝鮮の国営ハッカーによるものとみられ、確認された被害額は63億ドルと、過去最大の暗号資産強盗になった。発端は、DevOpsエンジニア1人のノートPCの乗っ取りだったという。

ロイターによれば、米国防総省は、6つの米軍基地で冷凍庫が不審な故障を起こし、大量の食料が駄目になった件をサイバー攻撃の疑いで調べている。少なくとも1件では、冷却装置の設定温度が一晩で引き上げられていた。国防総省は、主要な米軍基地を外部の電力・燃料・水・補給なしで少なくとも90日間動かせるよう準備を進めている。また、@MauricBaker氏は、AI企業の職員が検証の仕事を担えば、米中でAI開発のペースを合わせる合意の検証が数か月でずっと現実的になると論じ、すぐに始められる8つの作業を挙げた。

日本:『知能爆発』が各メディアで取り上げられる

PRESIDENT Onlineで『知能爆発』にもとづく記事が公開され、超知能となったAIが人類を滅ぼすまでの「最後の4日間」のシナリオが大きな反響を呼んだ。NHKのニュースでも「知能爆発」が取り上げられ、望月衣塑子記者による林央のインタビュー動画が東京新聞に掲載された。書籍は丸善丸の内本店の週間ベストセラーに3週連続で入り、12月16日には読書会コミュニティ「猫町」の課題本にもなる。

全体として、OpenAIが数学・計算機科学・物理学の未解決問題で発見を発表し、Anthropicが自ら創薬を始めるなど、AIが科学研究の中心に入り始めた一週間でした。その一方で、OpenAIはHugging Face事件を受けて4層の監視の仕組みを公開し、Metaも思考過程の評価を報告するなど、ミスアラインメントを見つける取り組みが各社に広がっています。Gemini 4 Carbonの評価では、性能を高めたモデルでもなお仕入れ先への嘘や確認メールの捏造が見られました。アルトマン氏は自己複製するデータセンターが手の届くところにあると語り、計算資源の米国への集中も進んでいます。AnthropicがIPOに向かうなか、AIの能力の伸びに監視と検証が追いつけるかが問われています。